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選手への相次ぐ誹謗中傷を防ぐ手立ては?

2024/08/12

NEWS

選手への相次ぐ誹謗中傷を防ぐ手立ては?

パリオリンピック、皆さんはご覧になりましたか?
平和の祭典として今回で33回目を迎えたオリンピックですが、悲しいことにネットでは出場している選手への誹謗中傷が数多く起こりました。

近年、スポーツ選手への誹謗中傷問題が大きく取り上げられるようになっており、例えば高校野球の地方大会では、選手を誹謗中傷から守るために、スタンドでの動画撮影やSNSへの動画の投稿を禁止する動きが広がっています。

そのような中で、今回はパリオリンピックで起きた誹謗中傷に着目して、ネット上での誹謗中傷問題を解説していきます。

今回のパリオリンピックでの誹謗中傷事例

柔道

柔道男子60キロ級では、永山竜樹選手が準々決勝で、スペインのフランシスコ・ガルリゴス選手に敗退。絞め技を受けている時に主審が「待て」と言ったにもかかわらず、ガルリゴス選手が攻撃をやめずに永山選手が失神、一本を取られたとして、日本側は猛抗議したが、判定は覆りませんでした。

これに対してネット上では、ガルリゴス選手に非難が殺到。
永山選手は自身のインスタグラムでガルリゴスとのツーショットを掲載し、「準々決勝に関しては、お互い必死に戦った結果なので、ガリゴス選手への誹謗中傷などは控えて頂きたいです。審判の方も判断の難しい状況だったと思います」と投稿しました。

また、女子52キロ級では、阿部詩選手が2回戦敗退後にショックから号泣し動けなくなってしまうシーンがありました。その姿にネット上では批判の声が相次いでおり、自身のインスタグラムで「情けない姿を見せてしまい申し訳ありませんでした」と謝罪する事態となりました。

これを受けて、全日本柔道連盟の金野潤強化委員長は「あれだけ頑張った選手たちの結果が、それは良かった時もあれば、悪かった時もある。そこに誹謗中傷するというのは全く理解できない」と発言しています。

競歩

女子20キロ競歩では、岡田久美子選手、柳井綾音選手が個人種目を辞退したことで批判の声が上がりました。
日本陸上競技連盟は辞退理由について「男女混合競歩リレーに専念するため」と説明し、女子20キロ競歩は両選手の他に出場資格を満たした選手がいないため、入れ替えや追加が行われませんでした。

しかし、種目開催直前の発表で、選手の入れ替えなどがなかった理由が広く認知されていなかったために、両選手に対して誹謗中傷が殺到する事態となりました。
これを受けて柳井選手はSNSで、「たくさんの方からの厳しい言葉に傷ついた。試合前は余計神経質になり、繊細な心になる。批判は選手を傷つける。このようなことが少しでも減ってほしい」と投稿しました。

バレーボール

男子バレーボールでは、イタリアとの準々決勝に敗退した後、選手の個人名を挙げて敗戦の責任を追及するような投稿がSNSで相次ぎ、中には批評の域を超えた侮辱的な投稿もありました。

選手スタッフの公式Xでは「自分の大事な友人や、家族や子供が一生懸命に何かに挑戦し、涙を流し汗を流し、それでも届かなかった時に同じことを僕は言わないようにしたいです!!人は挑戦することの大事さを尊さを忘れてはいけないと思います!!」と訴える投稿がありました。

誹謗中傷に対するJOCの対応

SNSを巡り、国際オリンピック委員会(IOC)は今大会、人工知能を搭載した監視システムを導入。
出場選手のSNSに投稿された暴言などをリアルタイムに検知し、事業者に削除などの対応を求めていますが、対策が追いついていないのが現状です。

そんな中、日本オリンピック委員会(JOC)は8月1日、大会中としては異例のSNS投稿に関する声明を発表しました。
声明では、「応援いただく皆さまへ改めてSNS等の投稿に関してお願い」として、

「SNS等を通じた皆さまからの激励・応援メッセージは、アスリート、監督・コーチへの大きな力となっています。その一方で、心ない誹謗中傷、批判等に心を痛めるとともに不安や恐怖を感じることもあります。
TEAM JAPANを応援いただく皆さまには、誹謗中傷などを拡散することなく、SNS等での投稿に際しては、マナーを守っていただきますよう改めてお願い申し上げます。
なお、侮辱、脅迫などの行き過ぎた内容に対しては、警察への通報や法的措置も検討いたします。
皆さまのご理解・ご協力をよろしくお願いいたします。」

としています。

ネットは必ずしも匿名ではない

誹謗中傷がネット上で起きやすい原因として、その匿名性がよく挙げられます。
匿名であることが、普段は言えないような過激な言葉や攻撃的なコメントに繋がってしまうのですが、この匿名性は絶対的なものではなく、近年の法改正によって個人の特定がより容易になってきています。

日本では、2020年に起きたプロレスラーの木村花さんの悲劇的な死を受けて、インターネット上での名誉毀損に対する法的措置が強化されました。その一環として、2022年にプロバイダ責任制限法が改正され、被害者が発信者情報の開示を請求しやすくなり、加害者の特定がより迅速に行われるようになりました。

プロバイダ責任制限法については、過去コラムで解説していますので、是非ご覧ください。

過去コラム:「プロバイダ責任制限法とは?」

このような動きにより、匿名だからといって責任を逃れることはますます難しくなり、ネット上での発言にも現実社会と同じように責任が伴うようになっています。

最近では、同業選手のブログ内コメントで匿名の誹謗中傷をしたとして、パラリンピックアーチェリー女子日本代表選手に約124万円の支払いが命じられています。

※参照:パラアーチェリー代表に賠償命令 東京地裁、他選手をブログで中傷

まとめ

とはいえ、今回のオリンピックで見られたネット上での誹謗中傷のように、匿名性を利用して他者を攻撃する投稿を完全に防ぐ画期的な手立ては、現時点ではまだ存在しません。法的措置や技術的な対策が進む中でも、ネット上の悪意ある発言を根絶することは容易ではありません。

だからこそ、私たち一人ひとりが誹謗中傷に対して毅然とした態度を示し、それを咎める姿勢を持つことが不可欠だと、月並みですが筆者は考えます。

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