SNS上の荒らし防止法がオーストラリアで発表
2021/11/29
NEWS
2021年11月28日にオーストラリアでSNS上で頻発する荒らしの身元特定を義務付ける「荒らし防止法」を発表しました。
日本でも似た法案である「プロバイダ責任制限法」との違いについても触れていきます。
荒らし防止法とは?
オーストラリア政府が発表した内容によれば、新法案はSNSなどのオンラインプラットフォームで中傷などを書き込む「荒らし」の身元の公開をプラットフォーム側に義務づけるもので、もし裁判でプラットフォーム側が身元を明かさない場合はプラットフォーム側が名誉棄損の代償を支払わなければならないと規定されているとのこと。
ここで注目すべきはこの法案では、荒らした本人が開示されなければ、プラットフォーム側がその代償を支払う義務があるという点です。
これまででは、プラットフォームはユーザーに投稿場所を提供する役割を担っており、開示請求を拒んだとしても責任は問われませんでした。
それが今回の法案では、開示請求に応じない場合は代償の責任が発生することになります。
また投稿者が連絡先の開示を拒んだ場合でも、被害者から法的措置があった場合はユーザーの同意なしに身元を公開できるとのこと。
メディアの反応は?
豪首相が発表した当法案に野党党首は肯定的な見方を取っている一方で、加害者が海外のIPアドレスから書き込めば簡単に規制を回避できることから、「私たちは、この法律が実効性のない単なるパフォーマンスではないことをしっかり確認するつもりです」とも述べています。
その他、海外メディアでは誹謗中傷の定義を明確にする必要がある、などとやや慎重な姿勢です。
では、仮にこのような法案が日本で発表された場合はどうなるのでしょうか。
日本には既に「特定電気通信役務提供者の損害賠償責任の制限及び発信者情報の開示に関する法律」、通称「プロバイダ責任制限法」があります。
これはインターネットサービスプロバイダ等が負う責任の範囲を制限する代わりに、被害者等は、プロバイダ等が保有する発信者情報の開示を請求する権利があることを定めた法律です。
このプロバイダ責任制限法については別途詳細をまとめておりますので、そちらをご覧ください。
「プロバイダ責任制限法」との違い
それでは、今回の「荒らし防止法」と「プロバイダ責任制限法」の違いは何でしょうか。
まず、大きな違いは責任の所在にあります。
「荒らし防止法」は、加害者・SNS運営会社等のプラットフォームであり、
「プロバイダ責任制限法」は加害者・プロバイダ(送信防止措置等を行わなかった場合)となります。
仮に日本で「荒らし防止法」のような法案が発表された場合、誹謗中傷被害は減少する可能性はありますが、プラットフォーム運営側は必要以上に負担が大きくなる可能性があります。
そして海外のサーバーを経由した場合の責任等の整備も必要になります。
SNSをはじめとした誹謗中傷が大きく取り上げられているなか、今回はオーストラリアがいち早く動きを見せました。
今後日本でも誹謗中傷対策に向けた法整備が推し進められるなかで、どのような法案が発表されるのか注目しようと思います。